私の勤務先である秋田大学総合情報処理センターでは、次年度、学習者同士が会話をしながらPC操作ができる端末室を、一部屋新設することを予定しています。その参考資料として、以前から気になっていた、美馬のゆり・山内祐平著の「未来の学び」をデザインするを読み終えたので、感想を記載します。
同書では、「未来の学び」を
学校に入学する前の子どもたちが、日々嬉々としていろいろなことを学んでいるように、大人にとっても、学びを楽しい知的探求の活動とすることができるはずです。これが著者らが考える「未来の学び」の姿です。(p.30)
と位置づけ、それを育む学習環境として、「空間」、「活動」、「共同体」の3視点から実践例やヒントを紹介しています。
第1章の「空間」では、MITのメディアラボや、はこだて未来大学での空間デザインについて述べられています。空間設計の具体例として特に参考になったのは、グループ学習教室の設計のポイントとして述べられている、
「グループ作業ができるような机」というだけでなく机やいすが動いて、人数や活動に応じて変形できる(p.104)
と言う点。はこだて未来大学の実践例として、壁に沿ってPC、中央に可動式のテーブル等を配置したケースが挙げられています。可動式の机にPCを常設するのは難しいと思うので、この例のように固定PC机と可動グループ学習テーブルを分離するか、固定グループ学習テーブルにPCも設置するか、のどちらかになるのでしょうか。このあたりは、もう少し実践例を調査したいと思っています。
第2章の「活動」では、
人間の学習を「知識の獲得」という個人的な営みではなく、対話やコミュニケーションから生まれるものであり、その時の状況や文脈とは切り離せないものである(p.141)
とする状況的学習論について、スファードによる獲得メタファと参加メタファの対比が紹介されている箇所などが、特に参考になりました。
第3章の「共同体」では、
通常、日本の学校で行われるテレビ会議は、儀式的な側面が強く、遠隔地間でお互いに調べたことを発表して終わってしまう場合が多い(p.171)
と指摘している点が印象に残っています。確かにこれはその通りで、多くのテレビ会議システムを用いた遠隔交流授業では、著者らが言う
現代の関心共同体にも適用可能な概念として実践共同体(p.155)
の構築までは、時間等の都合で実現できてないケースが多いのでは、と感じています。このあたりは、ベストプラクティスも集積できていると思うので、同種の授業を設計する際は注意したい点ですね。
美馬 のゆり 山内 祐平
東京大学出版会
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これまでwebサービスを開発する際に、クライアントサイドにFlash、サーバサイドにColdFusionを用いることがほとんどでしたが、趣向を変えてRuby on Railsでの開発も検討しています。その準備として、Rubyの入門書として評判の良い「初めてのRuby」をを読み終えたので、簡単に読後メモを記載します。
まず、著者も述べているように、本書はプログラミング経験者を対象にRubyの文法や文化を記載しているため、今の私にはちょうど適した内容・レベルでした。私自身のオブジェクトプ指向ログラミングの経験は、ActionScript2でのものしかありませんが、それでも本書は十分読みやすかったです。
ただ、Rubyの文法が、これまで慣れ親しんできたActionScript2とはかなり異なるため、Rubyを使う時はしばらくとまどいそうです。Rubyの構文で特に印象に残ったのが、「3.times do 〜 end」のように数値もオブジェクトとしてメソッドを持つ点や、インスタンス変数は@から始まる変数名をつけると言った変数名規則、モジュールの役割、と言った所です。
また、本書でも触れられているように、何らかのアルゴリズムを説明する際に、「おまじない」の記載が少ないので、アルゴリズム教育には向いてそうですね。その一方で、FlashやVisualBasicを用いてプログラミング教育をする時とは異なり、視覚的な成果が見えにくいので、授業でRubyを取り上げるときには、学習者への動機付けが大事であるように感じました。
Yugui
オライリージャパン
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GTD (Getting Things Done)の提唱者であるデビッドアレン氏が、同整理法について記載した「はじめてのGTD ストレスフリーの整理術」を読了しました。著者の経験から導かれたGTDの利用方法と魅力が簡明な文章で記されており、自分の仕事を整理する上で大変参考になりました。
同書で述べられているGTDとは、気になっていることすべてを収集し、それらに求められている結果と、それを実現するための具体的な行動を管理するための信頼できるシステムの構築をする、と言うものです。このようにGTDのアイデアはとてもシンプルなのですが、それを徹底して行うことにより、頭の中の気になることすべてを構築したシステムに預けることができ、今すべきことに集中できる状態を維持することができる、としています。
僕自身、GTDに出会ってからの1年ほど、本書で提案された方法を参考に自分のやるべき事を管理しています。残念ながら「ストレスフリー」にはなっていませんが、仕事を効率的に進める上では役に立っています。特に私が担当し、今夏に実施した学内ネットワーク機器更新の作業などでは、種々雑多な作業が毎日のように発生し、かつそれぞれの関係者と打ち合わせをしながら仕事を進める必要がありましたが、そのような仕事の際にも、本書に記載されているテクニックが役に立ちました。
随所に気になる仕事の整理法が記載された同書の中でも、特に印象に残った点は、やるべきことを単に羅列するのではなく、実際に必要となる具体的な行動を書き出すと言う点(p.36)と、2分間ルール(p.143)でしょうか。
また、GTDを実践するためのMac用ソフトウェアとして「Things」を用いていますが、このソフトウェアの使い勝手がよい点も、効果的にGTDを実践する助けとなっています。
本書を読みながら、大学の情報リテラシー科目などでも、このような広い意味での情報処理システムを教えていくと良いかも、と感じました。
デビッド・アレン
二見書房
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中島聡著の「おもてなしの経営学」を読み終えたので、読後メモを記載しておきます。
同書では、「ユーザー・エクスピリエンス」を「おもてなし」としてとらえることにより、その意義を明確にし、経営戦略上の重要性をAppleやYouTubeなどを例に挙げながら紹介しています。
ここでの「おもてなし」とは、利用者指向の統合的な環境構築であり、それにより利用者のライフスタイルに変化を与えるほどインパクトのあるもの、と言ったところでしょうか。
確かに、個人的にもAppleの「おもてなし戦略」のターゲットになっていて、iPod、iTunes、Apple TVにより、音楽・映像の視聴スタイルが大きく変わりましたし、その商品/サービスには満足しています。
同書を読みながら、教育や学習の現場で、この「おもてなし戦略」を実践している例について考えていました。「おもてなし」が、例えば大学運営や学習環境の構築に戦略的には重要であると思いますが、これを大規模で実践している例は、すぐには思いつきません。研究環境としては、規模はまだ小さいですが、私も利用しているMacの論文管理ソフトウェアのPapersが思いつくくらいです。
また、同書では「おもてなし」を中心とした話以外にも、様々な話題が取り上げられており、特に第3章の西村博之、古川享、梅田望夫の3氏との対談が面白かったです。この対談中で梅田氏が、
「教育」というと大学教授になることだったりするけど、50年後には、ブログを書いたりインターネット上にコミュニティを形成することが、「教育」だと思われているかもしれない。
と言っている(p.263)のが印象に残りました。大学等の教育機関は、50年後にも間違いなくあると思いますが、梅田氏の言うように、教育の場というのは、既存の教育機関以外にも広がっていくことでしょう。
中島 聡
アスキー
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「マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった」を読みましたので、以下に感想をメモしておきます。
同書では、著者がネパールをトレッキングした際に、現地の図書館に本がほとんどない惨状を目にし、NPO”Room to Read“を立ち上げ、本を寄贈したり図書館を作るなどのこれまでの活動が記されています。
著者を中心とした人々が、本を届けることを通して地域の人々と交流し、迎え入れられている様子が書かれているだけではなく、マイクロソフトに勤務していた著者が、プロジェクトリーダーとしての手腕を発揮し、”Room to Read“を成功に導く過程が、とても魅力的に書かれています。
特にネパールの図書館に、父親と一緒に本を積んだロバを連れていく様子などは、著者の高揚感を感じながら楽しく読み進めました。
図書館がない、本がない、と言った地域に対して、その地域の人々と協力し、その意思を支援する形で”Room to Read“の活動を進め、さらに資金等の提供者に活動の詳細を伝えていることなどが、持続可能(sustainable)な活動となっている大きな理由なのでしょう。
同書を読みながら、以前読んだ河合隼雄著「こころの処方箋」にあった、「善は微に入り細にわたって行わねばならない」を思い出しました。「良い事」を成し遂げるには、その意思は必要条件かもしれませんが、十分条件ではないということなのでしょうね。
ジョン ウッド
ランダムハウス講談社
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