2008年01月の投稿

先日、市川伸一先生の著書「学ぶ意欲の心理学」を読了しました。私は教育心理学については門外漢なのですが、いくつもの興味深い内容が読みやすい文章で記載されていて、大変参考になりました。ここに自分用の読後メモを残しておきます。

第1章「動機づけの心理学を展望する」では「動機づけ」研究の過去と現在について、いくつかの学問分野の視点を交えて展望しています。

これまでの研究では、経営心理学の視点から経済的動機、親和動機、達成動機が提案(p.17)され、それらに方向性を持たせた階層性理論(p.21)が説明されています。また、基礎心理学の立場から提案された外発/内発的動機づけ(p.24)が紹介されています。この辺りの記述で特に興味深かったのが、自分の行動と賞罰が随伴しているという随伴性の認知(p.37)や、帰属理論(p.38)に基づいて行われた再帰属訓練(p.39)です。これらのトピックは、学習支援システムをデザインする際にも参考になりそうです。

また、「動機づけ」を内発と外発と言う二元論ではなく、外発から内発的動機づけへと連続的に遷移するものと捉えた(p.41)上で、注入、統一化などの状態分類を導入し、内発的動機づけへの状態遷移を促進させるためには教育者と学習者の関係性が重要である、というデシによる考えが述べられています。このアイデアは理解しやすいのですが、どのようなデータに基づいて述べているのかに関心を持ちました。45ページで触れられているヒドゥン・カリキュラムは、まさに私が現在開発しているSNSベースの学習支援システムをデザインする際に考えていたことでもあります。

ここまでの動機づけ研究に関する概略を述べた後で、著者自らが提案している学習動機の二要因モデルが紹介されます。このモデルでは、学習動機を学習内容の重要性と学習の功利性と言う2つの要因によるマトリックスとして整理しています。この分類に基づいた心理テストの結果から、内容関与的動機と内容分離的動機と言う2郡にマトリックス要素を大別し、それらの郡による学習手法の違いを述べるくだり(p.58)は非常に刺激的でした。また、内容分離的動機を高めていっても、必ずしも学習のしかたの質もあがるわけではないという指摘(p.60)は重要ですね。

第2、3章では、それぞれ和田秀樹氏、苅谷剛彦氏との動機づけに関する討論が収められています。これらの討論を通して、著者の「動機づけ」や「動機づけ」研究に関する立場を明確にしています。特に印象に残った言葉は以下の通りです。

  • 私は、学校は何を考えるべきかという時に、一言で言ってしまえば、もっと実用志向を重視すると言うことだと思います(p.98)
  • 俗流・教育心理学の学習モデルは、あくまでも個人のモデルであり、せいぜいが教師-生徒関係といったミクロな社会関係までにしか目を向けない。個人をとりまくより大きな社会構造の変化や社会関係によって、人々がいかなる制約を受けているかといった側面への関心は希薄とならざるを得ない(p.144)
  • 子どもが社会化されていくという中で、大人が社会での価値というものを子どもに働きかけて内在化させたいと思っているわけですね。その時にどういうやり方をとるか。大人が統制的に振る舞うか、あるいは子どもが自律的にやろうとすることを促すか、ここで大きな違いが出てくるだろうというわけです(p.154)

第4章「自分のやる気を引き出す環境づくりと意識づくり」では、学習動機の二要因モデルに基づき、動機づけを促進するための処方箋がいくつか提案されています。この「学ぶ意欲の心理学」実践編とも言える章でも、いくつか興味を持ったところをメモしておきます。

  • 自分の意思で自律的にやっているという状態になっていくことは、学習を継続する上では望ましいこと(自己強化に関して、p.205)
  • 特に生涯学習ということを考えた時には、むしろ多重に支えられた動機ということを考えた方がいいのではないか(p.211)
  • 「この問題をやってみたことによって、自分はいったい何をここから学んだのか」を考えて、似たような場面で生かせそうな教訓として引き出してメモしておく。これは教訓を帰納すると言う意味で教訓帰納と呼んでいます(p.213)
  • 実現したいことがあって、そのために必要感を持って基礎を学ぶ。それを私は基礎に降りていく学びと呼んでいます(p.220)
  • RLA(researcher-like activity)と呼んでいる実践的な教育活動の例をあげながら、刺激し合い、啓発し合う場をつくることが、学ぶ意欲をかきたてる上でいかに大切かという話をしたいと思います(p.230)
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5 動機付けに関する意欲が深まります
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これまで、私の研究室の学生が作成した卒業制作物などは、pet.heteml.jp と言うアドレスで公開していましたが、この度yoshi-lab.netと言うドメインを取得し、研究室用のwebページを公開しました。


吉崎研究室のwebページ

この研究室用webページでは、卒業したゼミ生が作成した作品などを展示していますので、よろしければご覧ください。

このwebページを公開するために、ムームードメインでドメイン yoshi-lab.net を取得(年額950円)し、hetemlでサーバーをレンタル(月額1,500円)しています。

実際のwebページ作成には、最近話題のCMS、MODxを用いました。使用するCMSには、XOOPSJoomla!WordPressなども検討したのですが、それ程多くの機能は必要としない、頻繁にはwebページを更新しない、デザイン的に優れている、などの理由からMODxを選択しました。

このMODxは、時系列ではなく、文脈に沿ったドキュメントベースの管理に向いていて、今回のwebページ作成でも便利に使用することができました。例えば、今回のwebページ公開と同時に、アクセス解析サービスのGoogle Analyticsのコードを全てのhtmlファイルに埋め込んだのですが、こう行った作業も、MODxのテンプレートを修正するだけで、簡単に行うことができます。

なお、今回のwebページ公開に伴い、これまで用いていたpet.heteml.jpを含むURLは、yoshi-lab.netを含むURLにリダイレクトするように設定しました。

昨年(2007年)、12月22日に熊本大学で開催された研究会「一般高等教育とeラーニング/一般」に発表者として参加しました。その際の発表資料と感想を、以下で公開します。

研究会の感想
教育工学会の研究会ということもあり、授業設計と学習者のデータ取得が丁寧になされた研究が多く、大変勉強になりました。私の研究は、まだ、学習支援システムの設計と開発が主となっていますが、そろそろ授業での運用についても積極的に考えるべきだと感じています。

また、SNSに関する研究発表が何件が見られましたが、いまだSNSを学習の分野に取り込んだ決定的な研究の流れはないとの印象を受けました。SNS内の人的ネットワークの質/量と学習に関する様々なデータの相関が、今後この分野での研究ポイントとなるのでしょう。私自身も早急に結果をまとめていきたいと思っています。

資料公開について
今回はPowerPoint2003で作成した資料を、Googleのオンラインサービスである「Google ドキュメント」にアップロードし、「公開」の設定をしました。色やデザインは概ねPowerPointのそれが反映されています。ただPowerPointで指定していたフォント情報や、箇条書き行頭のマークが見えなくなってしまった点、そしてスライド内のアニメーション効果が反映されない点などが、PPTの資料と異なる所です(以下の公開資料では若干の修正をしました)。

「Google ドキュメント」で公開の設定をした資料に関しては、以下のようにwebページに埋め込むことができます。YouTubeでも使われている手法ですが、今回の資料程度の文字の大きさなら、多くの方に問題なく読んでもらえるのではと思っています。これまで、研究会等の発表資料はPDF形式で公開していましたが、今後しばらくは、「Google ドキュメント」形式での公開をしていきたいと思っています。

資料に関する注意

  • 以下の資料では、個人情報に関する画像にノイズ処理を行っています。予めご了承ください。
  • アップロードできるファイル容量の制限により、実際の発表で用いた資料からスライドの枚数を若干削除しています。




A Happy New Year

A Happy New Year